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- 齊藤
- 『エアシップQ』はもともとどういうスタートだったの?
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- 加藤
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最初に僕が『マインクラフト』が海外で当たっているという英語の記事を読みまして。サンドボックスだったら中嶋さんにと思って「サンドボックスゲーム作りたいんですけど」と言ったんです。
新宿の喫茶店で。中嶋さんが、そんなことを言うプロデューサーは初めて見た、取りあえず作ってみますと言って、その後、僕らが最初に作っていたゲームのドット画とか使い回して2、3カ月でもう既に動いていましたね。
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- 中嶋
- 最初、船もなかったんですが、横スクロールで、2Dで、ドット画というキーワードは最初からあったんですよね。
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- 齊藤
- なるほどね。タイトルは誰が?
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- 加藤
- 僕が取りあえず言った気がします、『エアシップQ』。
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- 中嶋
- 最初はキャッスルって言ってました。船の前はお城で作るっていうことで。
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- 齊藤
- でどこで船になったの?
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- 中嶋
- 2年以上前ですよね。
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- 加藤
- リンドブルムさんと中嶋さんの3人で話したときに、ちょっと違いを出すためには空中に浮いているものがあったほうがいいと。
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- 中嶋
- 城を作って、城どうしで戦うみたいなゲームや建物を建てていくというのは結構あったので、いっそのこと飛んでみようかとなったんです。
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- 齊藤
- なるほど。
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- 中嶋
- 一回の会議でもう大体、ブロックで船をこう作って、プロペラを付けたら早くなって大砲も付けてみたいなことは、大体一気に決まりました。
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- 加藤
- それで何回か作り直して、ソニーさんに持っていったら、Vitaで出していいよという話になったんです。でも僕らは宣伝する予算もないんで、何とかして手弁当の状態を報告し、サイバーエージェント・クラウドファンディング「Makuake」を活用しました。そうしたらお金がすぐ集まったんですよ。50万とか小さめに設定したら5時間ぐらいで集まって。それが話題になって、Cygamesさんの目に留まったんです。
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- 中嶋
- わらしべ長者っぽい感じの膨らみ方をして。
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- 加藤
- そうですね。全然意図していない感じでした。
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- 齊藤
- 初めにそのクラウドファンディングだと、本来、達成すべき予算じゃないよね。ある種、知ってもらうためにやったと。
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- 加藤
- そうです。知ってもらったり、β版をユーザーにプレイしてもらうために。渡邊さんがそれを見てなかったら、今の状態まで持ち上げられなかったかなというのがありますね。
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- 中嶋
- Cygamesさんのところに行った最初のプレゼンテーションでもVita版で遊んでもらっていたんです。
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- 加藤
- 実機で動くものが見たいという話で。
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- 齊藤
- もう、その時点ではいわゆるデモ版じゃなくて、本実装の過程のところだったんだ。
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- 中嶋
- 本実装された船で遊んでもらいました。そのときのプログラムは今でも使われています。
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- 齊藤
- そうなんだ。それはすごいね。
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- 加藤
- Cygamesさんも実際、実機で動いているということが結構重要だったんじゃないかと思います。
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- 齊藤
- Cygamesとしても、コンシューマータイトルはやっていなかった?
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- 加藤
- これが初めてです。偶然、ソニーさん側も新しいメーカーを増やしたいし、マイクラの後の子ども向けのサンドボックスがないので、『エアシップQ』をもうちょっとプッシュしようっていう流れだったんです。
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- 齊藤
- いろいろ運やタイミングが良かったんだね。
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- 加藤
- 結果的に4年半もかかったんですが、もう『ドラゴンクエストビルダーズ』が出るというのを聞いて、日本初と言うからには先に出さないととなりました。
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- 齊藤
- 4年半前にやりたいと思って描いていた形にはなったの?
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- 加藤
- なりましたね。なりましたし、当時のイメージよりはだいぶアクション寄りになりました。僕らとしては結構、今までにない感じのものになったかなと。
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- 中嶋
- 似ているゲームはないと思います。サンドボックスと言うからには『テラリア』と比較されますが、やってみたら全然違いますね。
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- 加藤
- そうですね。だいぶアクション寄りに仕上がっています。イメージ的にはスーパーマリオ的な方向性にサンドボックスの要素があるみたいな感じの仕上がりに最終的になりましたね。
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- 齊藤
- Cygamesさんからこういうふうにしたほうがいいんじゃない?みたいなのはその時点ではあまりなかった?
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- 中嶋
- 一つ大きなハードルがあって。ストーリーモードっていうのが、まだあんまりちゃんとしてなかったんです。ランダムで作った島で冒険できるだけしかなくて。
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- 齊藤
- 導入ってすごく日本のゲームユーザーにとっては重要だよね。箱庭とか遊び場を用意してあげたからといって、皆が同じように自由に遊べるわけではないから。やっぱりある程度の導入は必要だよっていうところのストーリーモードが。
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- 中嶋
- そういう手引きがある状態にしないと、何日かで脱落するっていうのは『gumonji』やって分かってたんで、必要ですっていう話をCygamesさんとして、作りました。
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- 齊藤
- そこで、『gumonji』が生きてきた。
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- 中嶋
- 生きてます。会議でこれって何やっていいか分からなくなるんじゃないですかって言われて、島が10個ぐらいあって、こういう順番で、こういうふうに石像というものを順番に触っていくと能力アップしていくシステムがあるんで、という説明をしましたね。
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- 実際に『エアシップQ』をプレイしてもらいました。
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- 齊藤
- 面白いね。
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- 中嶋
- 結構、アクション感が強いと思うんですよ。ちょっと子どもとかが邪魔したりするのも期待して、僕は今、足引っ張りたい欲を必死に堪えました。(笑)
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- 中嶋
- ストーリーモードの最初、船がなくてろうやに閉じ込められている状態の脱出から始まるんですが、そこはかなりこだわって作ってます。
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- 齊藤
- デバッグ大変だよね。皆、予想を超えることをし始めるでしょう。
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- 中嶋
- ストーリーがあって、はまらずにクリアしないといけないんで、めちゃくちゃ大変です。
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- 齊藤
- あとレベルデザイン的な縛りはあるにせよ、何でもOKと言っちゃったら、シナリオ上、それこそ一番到達したいところまでブロック積めばそれで行けちゃうわけだから。
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- 加藤
- そうですね。
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- 中嶋
- 結構、そういうので工夫しました。例えば最初は作れるアイテムが少なくなっていて、途中で作れるようになったりとか。それでも普通のブロック積んでいくだけで、かなり何でもできます。
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- 齊藤
- 『エアシップQ』自体は何人チームなの?
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- 加藤
- 一番多い時で13人です。途中デザインで外部から増員しました。プログラマーだけでいったら、一番多い時で5人です。
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- 齊藤
- それぐらいの規模だと、手が空いているやつが全部やりましょうっていう話になっていくでしょう。
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- 中嶋
- もう、僕がめっちゃフォトショップで作業しています。ドット絵がちょっとずれていたら直したり、色味がちょっと変だったら調整したり。いちいち専門家にまた依頼するより自分でフォトショップいじったほうが100倍早い。監獄のマップとか、全部の固定のマップがいくつかあるんですけど、大体僕が作りました。
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- 齊藤
- この辺の配置ツールとかっていうのは、ちゃんと作ったの?
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- 中嶋
- 僕が手弁当で、この最初のバージョンはでかいテキストを書いて、食わせた頃があるんですけど(笑)。見かねてリンドブルムさんがもっと柔軟なツールを作ってくれましたね。
次回はゲーム開発の未来を熱く語る!
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齊藤 陽介(さいとう ようすけ)
スクウェア・エニックス執行役員、エグゼクティブ・プロデューサー。黎明期から旧エニックスでオンラインゲームの開発を行ってきた開発者。代表作には『アストロノーカ』、『クロスゲート』、『ニーア レプリカント/ゲシュタルト』、2012年にサービスを開始したMMORPG『ドラゴンクエストX オンライン』のプロデューサーを担当。また、昨年発表した『ニーア オートマタ』『ドラゴンクエストXI』のプロデューサーを担当。
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加藤 拓(かとう たく)
株式会社ミラクルポジティブ 代表取締役。ゲームプロデューサー。
株式会社スクウェア・エニックス在籍時に、『みんなdeクエスト』、モバゲータウン用RPG「エルアーク』のプロデュースなどを担当。2010年に株式会社ミラクルポジティブを設立。
『エアシップQ』の生みの親として奔走し、株式会社Cygamesからの7000万円の資金調達に成功。同作のプロデューサーを担当する。 -
中嶋 謙互(なかじま けんご)
小学生の時からゲームプログラミングを始め、大学入学後ゲーム制作を開始。96年、世界初のJavaアプレットを用いたMMORPGを制作し、98年にはその続編LifestormシリーズをWindowsで発売、ヒット。2001年にはオンラインゲーム用ミドルウェアVCEを開発し、独自に開発した『gumonji』を含めて約50社で利用される。『エアシップQ』のメインプログラマー兼ディレクターを担当する。